親を扶養に入れる条件とは?別居の仕送りや税金・社会保険のメリット・デメリットを徹底解説
扶養している親族がいる場合に受けられる税金控除が「扶養控除」です。扶養控除は配偶者以外の扶養親族と生計を一にしている場合、一定の金額を課税所得から差し引くことができる所得控除の一種です。
16歳以上19歳未満、あるいは23歳以上70歳未満は一般扶養親族として38万円、19歳以上23歳未満は特定扶養親族として63万円、70歳以上の親族は老人扶養親族として48万円(同居の場合は58万円)の控除を受けることができるようになっています(所得税)。
条件を満たしていればサラリーマンの場合、年末調整の書類に書くだけで受けられる控除ですので忘れないようにしましょう。もし申告が漏れていた場合でも、確定申告を行うことで過去5年間に遡って控除を受けることが可能です。
両親を扶養控除の対象とするための条件
扶養親族となるための条件は大きく5つあります。以下のすべてを満たした場合は扶養控除の対象となります。
6親等内の血族及び3親等内の姻族であること
血族は直系で、姻族は配偶者に関する家族ですね。父母はもとより、祖父母、曾祖父母、兄弟、甥姪、叔父叔母、従妹なども対象になります(血族)。姻族の場合は配偶者の父母、祖父母、叔父叔母、義理の兄弟とその子あたりまでです。扶養するしないは別にしてかなり幅広い範囲で認められています。
扶養の対象となる者の所得が年58万円以下(令和7年以降)
令和7年(2025年)度の税制改正により、所得要件が従来の48万円から「58万円以下」に引き上げられました。
たとえば、給与所得の場合は123万円以下(給与所得控除の最低保障額65万円を加算)。年金を受給している場合は、65歳未満なら118万円以下(公的年金等控除が60万円)、65歳以上なら168万円以下(公的年金等控除が110万円)となります。
ちなみに、遺族年金を受給している場合、遺族年金の金額は所得税の計算において所得に算入しません。年金をもらいながら、アルバイトやパートで収入がある場合はパート収入と年金所得とを合算して計算することになります。
生計を一にしていること
同居しているような場合は分かりやすいですが、別居している場合は本人(扶養者)によって生計が維持されていることが条件になります。代表的なものとしては仕送りが挙げられますが、それなりの金額である必要があります。同居して生活費を出しているなら別ですが、別居していて1万円程度の仕送りでは扶養しているとは言えないでしょう。
なお、令和5年(2023年)以降、30歳以上70歳未満の国外居住親族は原則として扶養控除の対象外となりました。ただし、留学生、障害者、または年38万円以上の送金を受けている場合は例外として対象となります。
ほかの人に扶養されていないこと
たとえば、兄弟が別々に仕送りをしているという場合は、それぞれが親を扶養に入れるということはできません。
青色申告者の事業専従者等でないこと
青色申告者の事業専従者としてその年に一度でも給与の支払を受けている人、または白色申告者の事業専従者である人は、扶養控除の対象にすることはできません。
上記の条件をすべて満たしていれば扶養控除の対象となります。サラリーマンの場合は年末調整時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類があると思いますので、そちらに、被扶養者の氏名や住所を書いて申告します。
手続きとしてはそれだけです。あとは勤務先が年末調整を通じて納税額を調整してくれます。おそらく税金の還付があるでしょう。翌年の住民税も安くなります。万が一、年末調整で申告を忘れてしまっても、ご自身で確定申告を行えば最大5年間遡って還付を受けることができます。
特定親族特別控除について(令和7年新設)
令和7年の税制改正により、19歳以上23歳未満の特定扶養親族に関しては「特定親族特別控除」が新設されました。これにより、対象となる親族の所得が58万円を超えても段階的に控除を受けられるようになり、いわゆる「年収の壁」が緩和されています。
| 所得(給与収入目安) | 所得税控除額 | 住民税控除額 |
|---|---|---|
| 58万円以下(123万円以下) | 63万円 | 45万円 |
| 58万円超85万円以下(123万〜150万円) | 63万円 | 45万円 |
| 85万円超90万円以下(150万〜155万円) | 61万円 | 45万円 |
| 95万円超100万円以下(160万〜165万円) | 41万円 | 41万円 |
両親を扶養したときの節税メリット、税効果
例えば両親(扶養控除の対象。両親ともに70歳以上)を二人とも扶養しているとしましょう。
この場合、老人扶養親族として48万円×2名分=96万円を所得控除することができます(別居の場合)。もし同居している場合は、同居老親等として1人あたり58万円(2名で116万円)の控除となります。
実際の節税効果はあなたの年収によって変わってきますが、別居で所得税率が20%なら192,000円、10%なら96,000円相当の所得税の節税となります。
住民税は老人扶養親族(別居)としての控除は38万円なので2名分の76万円が所得控除され、住民税の所得割である10%分の76,000円が節税となります。なお、同居している場合の住民税の老人扶養控除は45万円となります。
別居する両親を扶養の対象とするときの注意点
ちなみに、別居している両親を税制上の扶養とするとき、必要な手続きは勤務先にぺら紙を一枚提出するだけでOKなのですが、その実態について税務署や市役所から確認が入ることがあります。実態がないのに扶養していたことにするのはNGです。
実態がないのに扶養として申告すると、修正申告が必要になるだけでなく、延滞金や追徴課税などの恐れもあります。
別居する両親を扶養とする場合の条件として最もあいまいな部分が「同一生計(生計を一にしていること)」です。こちらは同居していない場合は、より実態を求められます。
- 生活費を仕送りなどで援助していること
- その仕送りで生計を立てていること
が求められることになります。明確な金額基準はないのでこちらも実態です。基本的には両親の生活費用の銀行口座に生活費の助けとなるレベルの金額を送金することが必要になります。
仕送りをしている場合の記録を残しておくこと
両親に仕送りをして扶養しているというような場合、仕送りをしている事実を証明できるようにしておきましょう。確実なのは銀行振り込みによって仕送りをすることです。
なお、定額の仕送りを毎月送るのであれば「住信SBIネット銀行の自動送金・自動振り込みサービス」がお勧めです。振込手数料無料(回数制限あり)で指定の銀行口座に毎月定額の送金が可能です。こうして記録を残しておけば、仕送りをしているという事実が記録として残ります。
扶養に入れることのデメリットや注意点
扶養に入れることで税金が安くなるメリットがある一方で、気をつけなければならないデメリットも存在します。
ふるさと納税の限度額が減少する
扶養控除によって課税所得が減少するため、ふるさと納税などをしている方は寄付可能額が減少します。
高額療養費の自己負担限度額が上がる可能性がある
親を社会保険の扶養に入れるなどして世帯を合算すると、世帯全体の所得が上がり、高額療養費制度における自己負担限度額が上がってしまう場合があります。
世帯分離による介護費用軽減とのトレードオフ
同居親族を社会保険の扶養に入れると、世帯を分けることで介護保険の自己負担額や施設利用料を軽減する「世帯分離」の手法が使えなくなります。親の介護費用と自身の税金・保険料の節減効果、どちらを優先するか慎重な検討が必要です。
ハードルは高いけど、社会保険上の扶養にする方法もある
上記はあくまでも、所得税や住民税など税制における扶養のお話です。
次はさらにハードルは高くなりますが、社会保険上の扶養とする方法を紹介します。たとえば、サラリーマンの場合、両親を社会保険上の扶養とすることで両親が払っている国民健康保険料を節約できます。
社会保険上の扶養できる親族の範囲
原則として同居している三親等内の親族ですが、父母、祖父母、孫、兄弟などは所定の条件を満たせば別居でも扶養にいれることができます。
親(扶養される者)の収入
60歳未満は130万円未満、60歳以上は180万円未満であること。所得ではなく収入なのでご注意ください。なお、扶養控除(所得税)の場合、遺族年金は所得とみなされませんが、社会保険上は収入とみなされます。
扶養する者の条件
同居する場合は扶養者の年収の1/2未満であること。仮に両親の収入が180万円の場合、扶養する者の収入は360万円以上である必要があります。
同居しない(別居)の場合は仕送りや介護施設の費用など負担金額が被扶養者(両親)の収入よりも大きいことが条件となります。仮に親の収入が120万円の場合、年120万円超の仕送りをしていないと扶養とは認められません。
以上のようになっており、別居している両親を社会保険上の扶養とするハードルは税法上の扶養よりかなり厳しくなっています。逆に同居している場合はそんなに難しいものではないですね。
条件を満たすことができれば、両親の国民健康保険料の負担もなくなるうえ、医療費の高額療養費の世帯合算も利用することができるようになります。ただし、健康保険で親を扶養に入れることができるのは74歳までです。75歳以降は後期高齢者医療制度の対象となります。
以上、親に仕送りをしていれば別居でも扶養控除で節税できるというお話でした。
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