ネット銀行やネット証券、ネット生保と、多くの金融商品がネットで買える時代になりました。当然、金融資産の管理もネットで行われるようになっています。
ネット銀行の場合、預金通帳は発行されません。ネット証券でもすでに株券や債券などの有価証券は電子化されていて証券は発行されていません。
こうしたペーパレス化、電子化された金融情報は便利な反面、口座の有無を書面等で確認をしにくいです。自分自身はともかく、自分に万が一があった時に家族が困ってしまうこともあります。
ペーパレス化された金融資産が遺族に知られないまま……となってしまうことも。そんなことにならないために、管理をしっかりとするようにしましょう。
金融商品の電子化とペーパレス化が進む
今では、ほとんどの金融取引は電子化されています。
- 預金通帳→ネット銀行は発行されないところが多い
- 株式(株券)→株券は電子化され発行されない(2009年)
- ETF→電子化済み(2008年)
- 投資信託→受益証券は電子化(2007年)
- 債券→国債は2003年電子化、一般債も2006年に電子化
- 保険証券→自動車保険(損保)分野では一部電子化
これまでは通帳や有価証券として発行されていたものが、電子化やペーパレス化が進んでいます。
これまでは証券として紙で権利を確認できたわけですが、ネット取引や電子化が進んだことで、物理的な証券などが何も発行されないわけです。
ネット証券での株取引なども電子交付サービスを利用していると利用明細等は郵送されません。取引もすべてインターネット上で行われるため、外から見たら金融機関に口座を持っているのかすらはた目にはわかりません。
自分自身であれば、そうした情報を管理することはできるでしょうが、万が一のことも考えておく必要があると思います。
自分自身に万が一があった場合(死亡や事故)はもちろん、認知症などの病気で思うように利用ができなくなる可能性もあります。
そうなった時に、家族や遺族に大きな負担とならないように、対策をとっておきましょう。
家族や遺族が金融資産がどこにあるかわからない
ネットバンクやネット証券などが普及し、預金や運用資産などがインターネットを通じて取引できるようになりました。
便利になった一方で、自分に万が一があった時、その財産がどこにどのように管理されているのかを遺族が発見できなくなるというリスクもあります。
万が一の場合、死後にパソコンなどをチェックしてある程度は探すことができるかもしれませんが、IDやパスワードの管理状況などによっては遺族が、あなたの財産を発券できず、そのまま放置……なんてことになるリスクもあります。
放置していると、時効により没収されることも……
こうした状態で放置をしていると、時効によって資産が没収されてしまうこともあります。
たとえば、銀行預金の場合、預金があっても10年以上放置されていたら睡眠預金(休眠預金)となってしまいます
そうしたリスクを減らすためにどのような対策があるでしょうか?
それは財産目録を作っておくことです。何らかの形で家族(遺族)にそうした財産があることがわかれば、対応できます。
終活・生前整理という言葉がよく使われるようなりましたが、金融取引がペーパレス化された現在だからこそ、財産目録は重要です。
レバレッジ取引をしていると遺族に借金を残すことも
最悪のケースなのはFXや信用取引などのレバレッジ取引をしている場合です。
通常の投資であれば最悪でも失うのは預けている財産だけです。一方で証拠金取引は預けた資産以上の取引ができます。
ハイレバレッジ取引をしていて、相場が大きく逆方向に動いた場合には、預けている資金(証拠金)以上の損失が出る可能性もあります。
金融機関の取引状況をメモ・記録として残す(財産目録)
これが一番です。万が一の場合でも机などを整理すればわかるところに、どの金融機関に口座を持っているのかをメモしておきましょう。
- ○○銀行 △△支店 口座番号:123456789
- ××ネット証券 口座番号:234567890
- ○×証券 口座番号:345678901
こんな感じで十分です。パスワードなどを同じ紙に書くのはセキュリティ上よろしくありませんので、記載する必要はないと思います。
口座番号さえわかればあとは遺族が手続きできるはずです。
ネット銀行やネット証券の中には口座は作ったけど、取引していない(残高がない)というような口座もあるかもしれません。残高ゼロの場合はそれがわかるようにしておくと遺族の手間を減らすこともできますね。
あと、ネット金融資産とは関係ないですが、他に実物資産などがある場合はそのこともメモしておくと良いでしょう。
また、相続がらみのトラブルは年々増えています。そうしたことを考えるとしっかりとした遺言書を残しておくというのも重要になってきます。遺言書については「遺言書の書き方と効力」でもまとめているのでこちらもぜひご一読ください。
保険証券はまとめて保管、家族にある場所を周知する
金融機関の中でも「保険」に関しては特に重要です。
あなたに万が一のことがあっても、家族があなたが加入している保険の存在を知らなかったというような場合、保険金の請求自体を失念したということになりかねません。
従来のように保険の営業マンとの付き合いが不要なネット生保などを利用しているようなケースでは、このように「気づかない」という可能性も高まります。
基本的に保険はこちら側が請求することで初めて受け取れるものです。せっかくの保障が受け取れないということが無いように、自分がどのような保険に入っているのかを家族間で共有しておくことも大切ですね。
ネット生保の場合であっても、保険証券までペーパレスということはありません。保険証券はしっかりとわかるところにまとめて保管するようにしましょう。(自動車保険ではソニー損保などがペーパレス化しているそうですが、生保では今のところないようです)
金融資産のアグリゲーションサービスを利用する
複数の金融機関に関する情報を一元的に確認できるサービスがあります。
こうしたサービスを利用しておき、家族などにもこうしたサービスの利用やID・PWなどを残しておけば、万が一の場合も資産状況をすぐに確認することができます。
財産目録には「借金」も記載しよう
ちなみに、借金がある場合はそれも記録として残しておきましょう。
相続人は「財産<負債」であれば相続放棄をすることでマイナスの財産(借金)を相続しないで済みます。
一方で、普通に相続(単純承認)してしまうと、遺族が借金を相続しなければならないことになります。
そうならないためにも、財産目録には借金もわかるようにしておくとよいですね。
まとめ。少なくとも「存在」がわかるようにはしておくべき
ネット銀行やネット証券のようにあなたの資産がネットだけで管理されているケースは今後ますます増えていくと予想されます。
最近だと「仮想通貨(ビットコインなど)」といったような存在もありますよね。
平常時であれば「あなただけがその存在を知っていればよい」ということになりますが、あなたに万が一があった時にはその存在を遺族が知らなければなりません。少なくとも、そうした資産があることはわかるようにしておくべきでしょう。
自分の金融資産がどのような形で存在しているのかを家族にわかるようにしておくというのは大切なことですね。
一番はエンディングノートのような書面を残しておくことでしょう。こうしたノートは自分に万が一があった時に家族にとって必要な情報を一つにまとめたようなものなので、年齢に限らず作っておくことをお勧めします。
以上、金融取引がペーパレス化された時代のネット金融資産の情報管理と相続についてまとめてみました。
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