デジタル社債とは?ほふりとの違いと優待、デフォルトリスクを解説

ポイントや割引券など、個人投資家向けの特典を組み合わせた社債が登場しています。その中には、ブロックチェーンを使って保有者の権利を管理する「デジタル社債(セキュリティトークン社債)」もあります。
企業を応援しながら利息や特典を受け取れるのは魅力ですが、購入するのはあくまで企業にお金を貸す金融商品です。この記事では、通常の社債との違いと実際の発行例を確認し、特典に引かれてリスクを取りすぎない選び方を解説します。
デジタル社債は、権利を管理する仕組みが変わっても、発行企業のデフォルトリスクが残ります。また、「デジタル特典付き」という名前だけでは、ほふりの振替制度を使わない社債かどうかは判断できません。
事例の確認日:2026年9月16日。以下の発行例は新規募集を終了しています。利率や特典は当時の条件であり、現在購入できる商品の一覧ではありません。
デジタル社債とは?通常の社債との違い
デジタル社債は、社債の権利をブロックチェーンなどで記録し、発行や移転を管理する仕組みを使った社債です。セキュリティトークン(ST)の「セキュリティ」は有価証券を意味し、安全性を保証する言葉ではありません。
投資家が企業に資金を貸し、企業が契約に従って利息と元本を支払うという関係は、通常の社債と共通です。社債をSTにしたことだけで、発行企業の財務内容や返済能力が改善するわけではありません。
なお、通常の振替社債もすでにペーパーレスです。「紙の社債がスマートフォンに入った」という区別では、違いをつかめません。ほふりの一般債振替制度では、振替口座簿の記録を通じて社債の権利を管理します。
| 比べる点 | 通常の振替社債 | ST社債 |
|---|---|---|
| 権利の管理 | ほふりと口座管理機関の振替制度 | ブロックチェーンなどを用いた銘柄ごとの仕組み |
| 途中で売る方法 | 販売会社の取扱条件や売却価格を確認 | 譲渡制限や取引市場の有無を銘柄ごとに確認 |
| ポイントなどの特典 | 付く商品もある | 付く商品もある |
| 元本の安全性 | 発行企業などの信用力に左右される | 発行企業などの信用力に左右される |
ほふりを使わない場合、誰が権利を管理する?
ここでいう「ほふりを使わない」とは、証券保管振替機構(ほふり)の振替制度によってその社債を管理しない、という意味です。権利の記録や法的な手続きまでなくなるわけではありません。
たとえばSBI START債では、ブロックチェーン基盤「ibet for Fin」の記録と保有者の情報を使って社債原簿を管理します。社債原簿管理人はみずほ銀行です。移転時の名義書換などについても、商品ごとの仕組みが定められています。詳しくは契約締結前交付書面と目論見書で確認できます。
確認したいのは、記録するシステムの名前だけではありません。誰が社債原簿を管理し、売却や相続の際にどこへ連絡し、どの手続きで名義を変えるのかまで把握しておくと、保有後に困りにくくなります。
また、ほふりも、システム提供会社や社債原簿管理人も、その役割だけで発行企業の返済を保証するものではありません。管理する会社の知名度と、元利金を返す責任を負う会社の信用力は分けて考えましょう。
デジタル社債と個人向けの優待が結び付く理由
デジタル社債では、保有者の情報と会員サービスを連携させ、企業から投資家へ案内や特典を届ける設計ができます。企業には、資金調達に加え、自社の商品やサービスを使う人との関係を深める狙いがあります。
投資家にとっては、普段使っているサービスのポイントや割引を受け取れる点が魅力です。ただし、社債の保有者向け特典は株主優待とは別の制度です。保有額の基準、申込方法、特典を受け取れる回数は、それぞれの募集条件で決まります。
「ほふりを使わないから特典を付けられる」とは限りません。通常の振替社債でも、保有者が別のサイトに情報を登録するなどの方法で特典を提供できます。以下のJR西日本の例のように、名称が似ていても仕組みが異なる商品があります。
実例で見るポイントや特典の違い
丸井グループは利息の一部をポイントで支払う
丸井グループの第5回デジタル社債は、エポスカード会員向けに募集された1年債です。2026年3月12日発行、2027年3月12日償還で、購入単位は1万円。募集時の税引前年率2.0%の内訳は、金銭1.0%とエポスポイント1.0%でした。
このポイントは、おまけの優待ではなく利息の一部です。公式案内では、金銭とポイントのどちらの利息にも20.315%の税金がかかると説明されています。年2.0%をすべて現金で受け取れる商品とは、使い勝手が異なります。
さらに「みんな電力」の利用者には、別枠のポイント特典も用意されました。こちらには契約番号の通知などの条件があります。利息としてのポイントと、条件付きの特典を分けて読むことが大切です。
同社債は原則として途中売却できません。普段使うポイントでも、満期まで使わない資金で購入できるかが先です。条件は丸井グループの第5回デジタル社債の案内で確認できます。
SBI START債は購入単位と特典の対象額が異なる
SBIホールディングスが2026年3月24日に発行したSBI START債は、期間3年、額面1万円単位、税引前年率2.15%のST社債です。この2.15%は発行時に決まった利率で、途中で買う場合の購入価格を反映した利回りではありません。
発行時の募集では、10万円以上の購入者を対象に、購入額10万円につき200円相当の暗号資産XRPを贈る特典が案内されました。受け取りにはSBI VCトレードの口座などの条件があり、発行時購入者向けの手続期限はすでに終了しています。1万円から買えることと、1万円で特典を受け取れることは別です。
また、特典として暗号資産を受け取っても、社債の元本まで暗号資産になるわけではありません。XRPの円換算価値は変動します。発行体や必要な口座、特典条件はSBI証券の商品案内にまとまっています。
同債は、2026年3月25日から私設取引システム「START」で売買取引が始まりました。取引市場があるST社債の例ですが、買い手がいなければ希望条件で売れるとは限りません。売買取引開始の発表でも、売買注文が一致した場合に取引が成立する仕組みが示されています。
JR西日本のデジタル特典付き社債は通常の振替社債
JR西日本が2025年6月に発行した「Wesmo!でつながる!WESTER債」は、デジタル特典付きの個人向け社債ですが、ST社債ではありません。公式発表は、通常の振替社債であることを明記しています。
この事例では、保有額などの条件に応じてWESTERポイントを付与し、30万円以上の購入者には鉄道優待割引券も用意されました。社債の償還期日は2026年6月12日で、割引券の有効期限も終了している過去の事例です。
つまり、「デジタル」という名前や優待の有無だけでST社債と判断してはいけません。募集資料の社債の種類と、権利を管理する仕組みを確認する必要があります。
購入前に確認したいデジタル社債のリスク
デフォルトすれば利息や元本を受け取れない
最も大切なのは、発行企業が約束どおりに支払えなくなる信用リスクです。経営が悪化すれば、利息の支払いや元本の償還が滞ったり、投資額の一部または全部を失ったりする可能性があります。
「満期まで保有すれば元本が戻る」のは、発行企業などが契約どおりに返済できることが前提です。デジタル化も、ポイント特典も、この前提を変えません。社債は預金ではなく、預金保険による元本保護の対象でもありません。
資料では、販売する証券会社と、借金を返す発行企業を区別してください。同じグループの有名な会社や銀行が関わっていても、保証が明記されていなければ、その会社の保証が付くとは考えられません。担保や保証の有無、劣後債かどうかも確認します。
大企業であっても返済が滞ることはあります。過去の破綻事例と社債投資の注意点は、個人向け社債のデフォルトリスクを解説した記事で詳しく扱っています。
売りたいときに売れない場合がある
途中売却の条件は、ST社債によって大きく異なります。丸井の例のように原則売却できないものもあれば、SBI START債のように売買の場が用意されたものもあります。
ただし、売却できる商品でも、金利の上昇や発行企業の信用力の低下で価格が下がることがあります。売買手数料や売り値と買い値の差も負担になるため、受け取った特典を上回る損失が出る可能性があります。
数年以内に使う教育費や住宅資金、急な支出に備えたお金を、特典目当てで動かしにくい社債へ回すのは避けましょう。「売却可能」と「必要な日に、元本と同額で現金化できる」は異なります。
システムと特典の手続きにも確認が必要
ST社債では、記録システムの障害や不正アクセスなどにより、権利の記録、移転、支払いの手続きに影響が出るリスクも確認します。利用する基盤や復旧時の対応は商品ごとに異なるため、目論見書の「リスク」や「権利の移転」に関する説明を読みましょう。
特典については、購入だけで自動的に受け取れるとは限りません。会員IDの登録、保有額の判定日、別サービスの口座開設、申請期限などを確認し、必要な手続きを予定表に入れておきます。初回だけの特典を、毎年続くものとして計算しないことも大切です。
優待の価値は「使える金額」と「保有年数」で考える
特典を評価するときは、表示された額面より、普段の支出をいくら減らせるかを基準にします。使わない割引券のために出かけたり、特典を受け取るために割高なサービスへ変更したりすれば、家計の得にはならないこともあります。
たとえば、50万円を3年間投資し、3,000円相当の特典を一度だけ受け取ると仮定します。特典分を1年あたりに単純平均すると、次のようになります。これは実在商品の条件ではなく、比較方法を示す計算例です。
実際に使える特典額 ÷ 投資額 ÷ 保有年数 × 100
3,000円 ÷ 50万円 ÷ 3年 × 100 = 年あたり0.2%相当
| 特典の使い方 | 使える価値 | 年あたりの目安 |
|---|---|---|
| 全額を普段の支出に使う | 3,000円 | 0.2%相当 |
| 半分だけ使う | 1,500円 | 0.1%相当 |
| 期限切れなどで使わない | 0円 | 0% |
3,000円は50万円の0.6%ですが、3年間で一度なら年0.6%の上乗せではありません。この計算は税金、手数料、受取時期や再投資を考慮していない簡易比較で、社債の最終利回りを表すものでもありません。ポイントが利息なのか別の特典なのかによっても扱いが異なるため、税引後の利息にそのまま足さないようにします。
購入判断は返済リスクから始める
まず発行企業の返済能力を確認し、次に満期まで資金を置けるかを考え、最後に特典の価値を比べる順番にすると、特典に判断を引っ張られにくくなります。判断材料が足りなければ、特典が魅力的でも購入を見送る選択ができます。
発行企業の財務と
担保や保証を確認
満期と売却条件が
家計に合うか確認
使える金額と
必要な手続きを確認
- 発行企業:最新の決算、資金繰り、格付けの評価日を確認する。格付けも返済の保証ではない。
- 保有額:同じ企業や企業グループへの投資が偏っていないか確認する。
- 返済と売却:満期、担保や保証、劣後特約、途中売却の可否と費用を確認する。
- 権利の管理:利用する口座、社債原簿の管理者、相続などの問い合わせ先を控える。
- 特典:必要な購入額、登録期限、受取回数、利用期限を控える。
デジタル社債は、企業との接点や特典を楽しめる投資の選択肢です。その魅力を生かすには、普通の社債と同じ信用リスクの確認に加えて、銘柄ごとの売却条件と特典の使い道まで納得できることが大切です。
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