扶養義務という言葉をご存知でしょうか。民法には「直系血族及び兄弟姉妹はお互いに扶養する義務がある」という規定があります。したがって、子どもは親(両親)を扶養する義務(面倒をみる義務)があるということにないます。
今回はそんな親の扶養義務というものは子ども対してどの程度の義務が課されるもので、扶養義務者である子の立場から扶養義務について説明していきます。
両親を扶養するということと扶養義務
今回の話で扶養というのは所得税や住民税などの税制面あるいは健康保険などの社会保険といった部分に係る扶養ではありません。たとえば税法上の扶養は、両親などを同一生計をもって扶養している場合に認められるもので、この場合は扶養者の税金が安くなるというものです。
詳しくは「親に仕送りをしていれば別居でも扶養控除で節税できる」などでも紹介しています。
一方の扶養義務というお話は税金や社会保険ではなく、民法(みんぽう)という法律によって定められている義務です。冒頭にも書いたとおり、「直系血族及び兄弟姉妹はお互いに扶養する義務がある」とされています。
つまり、自分は自分の子ども以外にもは親や兄弟を扶養しなければならないわけです。
さらに、家庭裁判所は、特別の事情があるときは、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。という条文もあります。
3親等内の親族ということで、おじおば、甥姪、その各配偶者にまで扶養義務者が広がります。
絶縁:縁を切っても扶養義務は拒否できないのか?
たとえば、親兄弟と折り合いが悪くもう何年もあっていない、あるいは確執があって絶縁している、両親が離婚しており長く顔を合わせていない、といった状態でも扶養義務を負う必要はあるのでしょうか?
結論からいえば、親子関係を法的に絶縁することは基本的にできません。そのため、どんなに嫌いな親であっても扶養義務をなくすことはできません。
扶養義務は絶対的なものなのか?
扶養義務というのは親が未成年の子に対しては強い義務が発生しますが、子が成人すると相互に扶養し合う関係(相互扶養義務者)となります。
扶養というのはお金だけではない
扶養義務というのは何も金銭的な物だけではないです。もちろん、金銭的な援助(仕送り)をすることは扶養となるでしょう。また、それだけでなく介護などはもちろんですし、なんらかの手伝いをするというのも扶養にあたります。
扶養は自分のできる範囲でかまわない
扶養義務を負うといっても、未成年の子どもや配偶者に対して負う生活保持義務とは違います。
すべて面倒見てあげなければならないというものではなく、自分の生活が第一で問題ないです。そのうえで経済的な余力があるのであれば助けてあげるといった程度です。
自分には金銭的な余力もないし、忙しいから手伝いに行ったりすることもできないから無理です。という回答でもよいわけです。義務は拒否できませんが、事情により扶養できないというのは仕方がないことだからです。
ただし、扶養義務は負っているわけで、それを無しにすることはできません。
親から扶養してくれと頼まれた、裁判を起こされたらどうなる?
扶養義務を持つ親から扶養してほしいといわれた時、あるいは扶養するように裁判を起こされたらどうなるのでしょうか?
まず、子であるあなたには扶養義務がありますので、できる範囲で対応をしなければなりません。ただし、置かれている状況は人それぞれです。自分の生活を壊さない範囲での対応で問題ありません。
また、兄弟姉妹がいる場合の親の扶養の分担については子である限りは同等に負うことになります。長男だから扶養しなければならないといったことはありません。扶養の負担については基本的に話し合いで決めることになりますが、こちらできまらない場合は裁判所で決めることになるでしょう。
親の扶養義務と生活保護の関係
生活に困窮しているという時に出てくるセーフティーネットの一つが「生活保護」ですよね。
生活保護の申請をすると自治体から扶養照会で援助できませんか?と聞いてくるのはこの扶養義務があるからですね。もちろん、この要請を拒否することはできます。
この生活保護と新族による扶養義務については2012年に有名お笑い芸人の母親が生活保護を受給していたことが大きな問題となったことを覚えている方もいるでしょう。これを受けて生活保護法が改正されて2014年7月に施行され、福祉事務所の調査権限の拡大などが行われました。
扶養義務者に扶養能力があれば生活保護を受給できないということはありませんが、前述のように扶養義務はあるので、親から扶養してほしいと依頼された場合は可能な範囲で援助をする必要があります。
以上、親子の扶養義務についてまとめてみました。
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