年金の繰り下げ受給で年金額UP 長生きリスク対策と損益分岐点まで徹底解説
平均寿命は医療技術の進歩などもあって年々伸びています。その一方で寿命が延びるということはそれだけ長く生活してお金を使っていくことになるわけで、老後のお金の不安というのも大きくなっていきます。
その老後の不安に対する公的なサポートとなるのが「年金(公的年金)」です。
年金は原則65歳からの受け取りとなっていますが、この時期を前後させることもできます。これにより受給額が変化するのですが、長生きを経済的なリスクとしてとらえる場合、公的年金は「繰り下げ受給」がお得になります。
2020年5月29日には年金受給開始年齢を最大75歳にまで繰り下げられる年金改革法も成立し、同年6月5日に公布されました。今回は年金の繰り下げ受給について、メリットだけでなく、税金や社会保険料が増えるといったデメリットや注意点も含めて詳しく解説していきます。
長生きリスクとは?
普通に考えて、長生きするというのはいいことですし、うれしいことです。
ただし、長生きするということはいわゆる老後と呼ばれる期間が長期化することになります。定年は伸びましたが、それでも100歳まで生きれば老後を35年間過ごすことになります。
「老後資金に必要なお金とそれを貯めるための方法」でも紹介していますが、一般に老後に必要なお金は年金を除いて2000万円とも3000万円ともいわれています。ただ、こうした試算は平均的な年齢まで生きるとした場合という仮定にたっています。
ところが、この平均よりも長生きしてしまうとこの試算が崩れてしまいます。長生きしても生活にお金は必要になりますので、その分だけ余計にお金が必要になります。
この長生きすることによって生じる金銭的負担の増加を「長生きリスク」と呼んでいます。
伸びる寿命(老後期間)と足りない老後資金
厚生労働省の2022年(令和4年)のデータによると、男性の平均寿命は約81歳、女性の平均寿命は約87歳と、寿命は高い水準で推移しています。
また、現在65歳の方の平均余命は男性で約19年(84歳まで)、女性の場合で約24年(89歳まで)というデータとなっています。
前述のように長生きをしてしまうという事はそれに応じた備えが必要という事になります。
長生きリスクに備える保険
リスクに備える金融商品は保険です。定期保険や終身保険といった生命保険はいわゆる死亡リスクに備える保険だとされています。
その逆の長生きリスクに備える保険が何がご存知でしょうか?それは「年金保険」です。年金保険といっても様々な種類の商品が用意されています。死亡保険と同じように保険金の支払われ方で「定期年金」「確定年金」「終身年金」の3つがあります。
定期年金(有期年金)
長生きリスクに備える保険の基本形といえます。一定の年齢になれば保険金(年金)を受け取れます。受け取れる期間は決まっていますが、その途中で死亡した場合には、本来貰えるはずの年金は消えてしまいます。
確定年金
こちらは長生きリスクに備えるというよりは、貯金に近いです。一定の期間運用して、その運用結果を財源として一定期間で年金として給付するというものです。万が一途中で死亡してもその財源分はもらえるようになっています。
最近、節税効果や将来の老後資金のために注目されている「個人型確定拠出年金(iDeCo)」はこちらの確定年金タイプになります。
終身年金
こちらは長生きリスクに備えるには最適です。一定の条件のもとで、死ぬまで年金を受け取ることができるというタイプの年金です。長生きリスク対策としては最も効果的な年金制度といえます。
ただ、民間の保険では平均寿命が伸びていることを考えると保険者(引き受ける側)が大赤字となるリスクがあるため、この終身年金の提供は難しいのが現状です。
でも、私たちの一番身近にこの終身年金があります。公的年金です。国民年金や付加年金、国民年金基金、厚生年金はすべて終身年金となっています(※付加年金と国民年金基金は同時加入不可という制約があります)。
公的年金の受給額を増やす方法
長生きリスクに備えることができる年金保険としては「公的年金」があるということはわかりました。
じゃあ、実際にどのくらいもらえるのでしょうか?また、公的年金の金額(受給額)を増やす方法はないのでしょうか?
公的年金の受給額(老齢年金)の決まり方
国民年金は、掛け金を払った期間によって老齢年金の給付額が決まります。また、人によって別に加入することになる、以下の公的年金は下記の条件でも受給額が変動します。
- 付加年金:納付期間
- 国民年金基金:掛け金額と契約時の予定利率
- 厚生年金:現役時代の標準報酬月額(報酬比例部分)
基本的には時代によって差はあるものの「現役時代にどれだけの年金保険料を払ってきたか?」によって老齢年金(老後に受け取る年金額)は決まってくるのです。
平均額については上記で紹介しています。サラリーマンを40年続けた夫と専業主婦のケースで月額20万円くらいということになりますね。
では、もう老後という方は対策の打ちようがないのでしょうか?
年金の受給開始時期を遅らせて受給額を増やす
これが公的年金の繰り下げ受給というものです。
本来は65歳から受け取れる年金を「繰り下げて(後で)」受け取るようにすることで、毎年の受給できる年金額を増加させることができると言うものです。
【補足】基礎年金と厚生年金の「分割繰り下げ」が可能
2022年以降の制度では、国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)を別々のタイミングで繰り下げることも可能です。例えば「厚生年金は65歳から受給しつつ、基礎年金のみ繰り下げる」といった柔軟な受給戦略を選ぶことができます。
繰り上げによる減額と繰り下げによる増額
前もって受け取る「繰り上げ受給」も可能ですが、その場合は減額されます。
現在の公的年金の繰り上げによる減額率は、2022年(令和4年)4月の制度改正により緩和されました。昭和37年4月2日以降生まれの方については1ヶ月あたりの減額率が「0.5%」から「0.4%」に変更されています。
| 受給開始年齢 | 旧制度(-0.5%/月) | 新制度(-0.4%/月) |
|---|---|---|
| 60歳 | -30% | -24% |
| 61歳 | -24% | -19.2% |
| 62歳 | -18% | -14.4% |
| 63歳 | -12% | -9.6% |
| 64歳 | -6% | -4.8% |
一方で受給額の割り増し(繰り下げ)は「1ヶ月遅らせるごとに0.7%アップ」という水準になっています。仮に70歳までの60ヶ月間、繰り下げを行った場合には、月額42%も年金受給額を増やすことができます。
さらに2020年の年金改革法成立により、75歳まで繰り下げ受給ができるようになりました。仮に75歳まで繰り下げた場合は最大で84%の増額となります。なお、この改正は2022年(令和4年)4月1日から適用されており、対象となるのは「昭和27年4月2日以降に生まれた方」です。
繰り下げ受給をする単純な経済的メリット
メリットは、受け取ることができる年金を増額させることができると言うことになります。
仮に満期まで繰り下げをした場合、繰り下げをしなかった場合と比べて、平均的に生存すれば得をします。
平均余命以上に生存する場合、終身年金(死亡するまで受け取れる年金)である国民年金や厚生年金はさらに多くの年金を受給することができるのでいわゆる「長生きリスクに対する備え」となります。
繰り下げ受給のデメリットと注意点
繰り下げ受給にはメリットだけでなく、必ず知っておくべきデメリットや例外があります。
税金や社会保険料の負担が増加する
年金の受給額が増額されると、それに伴って以下の税金や社会保険料の負担が増加する点に注意が必要です。
- 所得税・住民税(年金収入が一定額を超えると課税されます)
- 介護保険料(所得に応じて変動します)
- 国民健康保険料や後期高齢者医療保険料(75歳以上)
そのため、額面上の年金が42%や84%増えたとしても、税金や保険料が引かれた後の「手取り額」の増加率はそれよりも低くなります。手取りベースで損得を考えた場合の損益分岐点は、額面ベースよりも2〜3歳高くなるのが一般的です。
早期死亡リスクと生活費の確保
早く死亡してしまった場合に「本来だと受け取れるはずだった年金が受け取れない」というリスクがあります。
もう一つの問題は「生活費」を確保しておくことです。繰り下げによって受給しない間の「収入」がないということになります。何らかの形で仕事をして収入を得ると言う方法や、これまで貯めてきた資産や個人年金などを使って生活をする必要があります。
加給年金や振替加算が停止される
配偶者がいる会社員が老齢厚生年金を繰り下げた場合、配偶者分の上乗せである「加給年金」は繰り下げ待機期間中は支給停止となります。繰り下げて年金が増える分と、受け取れなくなる加給年金の額を比較検討する必要があります。
繰り下げができないケース・例外
すべての方が繰り下げ受給を選択できるわけではありません。以下のようなケースでは繰り下げができません。
- 障害年金や遺族年金を受給している場合(自身の老齢年金を繰り下げることはできません)
- 特別支給の老齢厚生年金(60〜64歳の一部厚生年金受給者)は繰り下げの対象外です
年金の繰り下げ受給に伴う損得シミュレーション
通常65歳からの公的年金を繰り下げして受給をした場合、65歳から受給した場合と比較した損益分岐点(額面ベース)は以下のようになります。
| 受給開始年齢 | 損益分岐点(65歳受給と比較して総額がお得になる年齢) |
|---|---|
| 70歳繰り下げ(+42%) | 81歳11ヶ月(約82歳)以上長生きした場合 |
| 75歳繰り下げ(+84%) | 86歳11ヶ月(約87歳)以上長生きした場合 |
たとえば、70歳から受け取り開始とした場合、65歳から標準で受給するのを超えて総額がお得になるのは約82歳になってからです。81歳以下で死亡した場合は、65歳から受け取っていた方が総額は大きくなります。
また、75歳まで繰り下げた場合の損益分岐点は約87歳となります。さらに、これらは「額面ベース」の試算であり、前述の通り手取りベースで考えると損益分岐点はさらに2〜3歳高くなる点に留意してください。
繰り下げみなし増額制度(令和5年4月施行)
2023年(令和5年)4月より「繰り下げみなし増額制度」が施行されました。これは、70歳以降に年金の受給を開始する際、繰り下げ待機していた過去分の年金を一括で受け取ることを選択した場合でも、5年前に繰り下げの申し出があったとみなして増額された年金を一括受給できる制度です。70歳以降の柔軟な受給の選択肢が広がりました。
長生きリスク対策としての公的年金は優秀な商品
人が死亡するタイミングというのは正直不確実な部分が大きいです。70歳で不運にも死亡する方もいれば100歳まで生存する方もいます。もちろん、長生きをするというのは幸せなことです。
ところが、お金に関して言えば、長生きをすればするほどお金がかかってしまうという事実があります。
そうした中で、国民年金、厚生年金など死亡するまで受給することができる終身年金は、長生きリスクをヘッジ(回避)することができる有用な金融資産であります。
仮に男性の場合で平均寿命まで生きた場合と、100歳まで生存した場合とで比較すれば年金の総受給額は大きく変わることになります。長生きリスクを回避(ヘッジ)するにあたって公的年金制度は優れた制度となっているわけです。
イデコ(iDeCo)+公的年金の繰り下げ受給もおすすめ
たとえば、老後の生活費に関しては現役時代に個人型確定拠出年金(iDeCo)を使って積立をしていき、それを原資として生活費とする。その上で公的年金はできるだけ繰り下げ受給をして、老後の“長生きリスク”に対して備えるというのは、攻めのイデコ(iDeCo)と守りの公的年金といった具合で攻守バランス良さそうな組み合わせです。
iDeCoについては以下の記事で詳しく紹介しているので参考になるかと思います。
以上、長生きリスク対策と公的年金の繰り下げ受給についての詳細な解説でした。ご自身の健康状態や資産状況、税負担などを総合的に判断して、最適な受給タイミングを選択してください。
繰り上げ受給をする方が良いケースもある
繰り下げする方がいいね。ってという意見も多いですが、それとは逆にむしろ繰り上げ受給(早く貰う)方が有利になるケースもあります。
特に自分で運用できる人、ある程度の資産や収入がある人はあえて繰り上げ受給を選択する価値もあります。
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