ダブルワークの税金・社会保険・雇用保険はどうなる?副業バレ対策と最新の法改正まで徹底解説
本業はフルタイムで働きながら、夜間や土日などの空いた時間に別の職場でアルバイトをするというダブルワークをしている方も少なくないかと思います。そんなダブルワークをするときの所得税や住民税、社会保険や雇用保険といった手続きの基本と、働く時間などをどのように調整するべきなのかをわかりやすくまとめていきます。
ダブルワークにおける税金・社会保険・雇用保険の問題
会社に勤めて働くというとき、給料からは税金が源泉徴収されます。また、勤務状況によっては社会保険(健康保険+厚生年金)や雇用保険(失業保険・労災保険)などにも加入することになります。
ただ、これが2か所以上で働いたときはどうなるのでしょうか?簡単にまとめると下記のようになります。
| 税金(所得税・住民税) | 従たる給与先(一般に副業先)では所得税が乙欄課税(やや高めの税率で源泉徴収)されます。最終的には主たる給与先の収入と合わせて確定申告が必要になります。 住民税は主たる給与から翌年特別徴収されるのが一般的です。 |
|---|---|
| 社会保険(健保+年金) | 副業先で社会保険の加入要件を満たせば両方で加入することになります。 社会保険の加入要件を満たさない場合は加入しません。保険料や給与などの扱いは1社勤務の場合と同様です。 |
| 雇用保険 | 雇用保険に関しては原則1か所でしか加入できません。生計を維持するに必要な「主たる賃金を受ける一つの事業主」において雇用保険に加入することになります(※65歳以上向けの例外制度あり)。 |
もう少し詳しく、個別にみていきましょう。
ダブルワーク時の所得税や住民税の取り扱い
まず、メインで働いている勤務先からの給与が「主たる給与」そして、ダブルワーク先(アルバイト先)からの給与が「従たる給与」となります。この決め方は自由で、扶養親族等申告書を提出した先が主たる給与を受け取っている先となります。
所得税の計算と申告、納付
従たる給料からは所得税がやや高めの税率で源泉徴収されます(乙欄課税)。最終的には主たる勤務先からの源泉徴収票とダブルワーク先の源泉徴収票を使って、翌年2月16日から3月15日の1カ月間の間に最寄りの税務署で確定申告をして税額を最終決定し納付します。
なお、主たる給与以外の収入が年20万円以下の場合には所得税の申告不要制度があります。
ただし、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合には、20万円以下の収入であっても確定申告が必要です。なお、この申告不要制度についてはあくまでも「所得税のみ」が対象で、住民税については規定がありません。そのため、所得税の確定申告をしない場合でも、住民税分については市役所での申告が必要となります。
2017年1月以降のアルバイト(労働)についてはマイナンバーの提出が義務化されているうえ、勤務先(ダブルワーク先)からも給与支払報告書が市区町村に提出されているため、収入がばれないということはありません。
住民税の計算と申告、納付
住民税の申告は税務署で確定申告を行った場合は不要で、副業収入20万円以下などで所得税の申告をしなかった場合は市役所で行います。ダブルワークのように主たる給与を受け取っている先がある場合は、前年分の所得に対する住民税が、主たる給与先の給料から特別徴収(源泉徴収)されます。
なお、確定申告時や住民税申告時に「一般徴収(普通徴収)」を希望するにチェックを入れておけば、副業分の住民税は個人の住所に納付書(請求)が行くことになりますが、これは確実ではありません。原則としては給与所得がある場合は特別徴収となります。市区町村によっては特別対応として一般徴収(普通徴収)としてくれる場合もあるそうです。
【参考】副業がバレないための「普通徴収」の限界と対処法
副業分の住民税を普通徴収(個人払い)に設定することで勤務先への副業バレを防ぐ方法が知られていますが、自治体によっては「給与所得はすべて特別徴収にする」という原則を厳格に適用しており、確実な回避策とはいえません。
現在はマイナンバー制度により市区町村への給与支払報告書の提出が徹底されているため、実質的に副業の把握は確実に行われます。副業バレを避けるよりも、まずは本業の会社の副業規定を確認し、正式な社内申請手続きを行うことが最も現実的で安全な対処法です。
副業バレを気にする人はご注意ください。
ダブルワーク時の社会保険
ダブルワークをするときの社会保険(健康保険+厚生年金)の取り扱いについて説明していきます。まず、社会保険に対しては下記の加入要件があります。
1)正社員の3/4以上の勤務時間、勤務日数を働いている人
こちらです。たとえば月20日、160時間勤務が基本の会社の場合、月15日以上、120時間以上を勤務する場合は社会保険の加入要件を満たします。また、現在は短時間労働者への社会保険適用が段階的に拡大されており、2024年10月以降は従業員51名以上の会社において下記の条件となっています。
1)週の所定労働時間が20時間以上
2)月額賃金が8.8万円以上(年収換算で約106万円以上)
3)2か月を超える雇用の見込みがある(※1年以上の要件は撤廃済み)
4)学生ではないこと
【ポイント】今後の社会保険適用拡大のスケジュール
2026年現在、社会保険の加入要件はさらに拡大する方向で進んでいます。
・2026年10月〜:月額賃金8.8万円以上という要件(いわゆる106万円の壁)が撤廃される予定です。
・2027年10月〜:企業規模要件が「従業員36人以上」へ拡大予定。
・2035年10月〜:企業規模要件が撤廃され、全規模の企業に適用予定。
この条件を満たす場合は社会保険に加入、満たさない場合は加入となりません。
| メインのみで満たしている | メインの会社のみの社会保険に加入します。保険料や給付はダブルワークをしても変わりありません。 |
|---|---|
| 両方で満たしている | 両方の会社で社会保険の加入条件を満たしている場合、標準報酬月額を両社の合計金額で計算したうえで、両方の会社で保険料を按分(合算して割合に応じて負担)することになります。 |
| 両方とも満たしていない | 社会保険には加入できず、国民健康保険と国民年金に加入することになります。両方の会社の労働時間や賃金を合計すれば加入条件を満たしたとしても、各社単独で要件を満たさなければ社会保険には加入できません。 |
副業的に短い時間でアルバイトをする場合は、社会保険料が高くならないというのはいいかもしれませんね。
ダブルワーク時の雇用保険・労災保険
労働保険(雇用保険・労災保険)についてはどうなるでしょうか?
まず、労災保険については全員加入かつ労働者の負担はありませんので、メイン先、アルバイト先両方で適用されることになります。一方の雇用保険については原則として1か所でしか加入できない決まりになっています。
雇用保険の加入資格、要件は下記のとおりです。
1)一週間の所定労働時間が20時間以上
2)31日以上継続して雇用される見込みである
3)雇用保険の適用事業所に雇用されている
| メインのみで満たしている | メインの勤務先で雇用保険に加入することになります。 |
|---|---|
| 両方で満たしている | 生計を維持するに必要な「主たる賃金を受ける一つの事業主」において雇用保険に加入することになります。 |
| 両方とも満たしていない | 原則として雇用保険には加入できません。 |
【参考】65歳以上向けの「雇用保険マルチジョブホルダー制度」
2022年1月より、65歳以上の労働者に限り、複数の事業所での労働時間を合算して雇用保険に加入できる「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が創設されています。
各事業所での労働時間が週5時間以上20時間未満であり、合計して週20時間以上になる場合、本人がハローワークに申し出ることで加入でき、失業時の給付対象となることが可能です。
ダブルワーク希望者を雇用する場合の注意点(事業主向け)
最後に、労働者側ではなく、雇用者側である事業主向けにダブルワーク希望者を雇用する際の注意点です。
特にフルタイム勤務者の+αのダブルワークの場合、法的には「残業」に該当することになります。1日8時間以上、週40時間以上の労働に対しては副業であっても残業代として割増賃金が適用されることになります。
現在の労働基準法第38条によると「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められています。つまり、本業で8時間労働をした後のサラリーマンを副業として雇用する場合、そのアルバイトの時間はすべて割増賃金が適用されることになってしまいます(25%増)。
言い換えれば、労働者としてはダブルワークとして雇われた場合には雇用主に対して残業代を支払うように請求する権利があるということになります。まぁ、確実に関係は悪化するでしょうが。
【注意点】労働時間通算ルールの見直し議論(2026年法改正予定)
上記のような「労働時間の通算」は、副業・兼業を推進する上でのハードルとなっているため、2026年に大きな制度変更が審議されています。
事業主が異なる場合、労働時間の通算を廃止し、各企業が「自社で働いた労働時間のみ」に基づいて割増賃金を計算する仕組みへ簡素化する方向で、厚生労働省が労働基準法改正案を国会に提出する予定となっています
※法案の成立状況にはご注意ください。
以上、ダブルワークや副業などで2か所以上から給料をもらうときの税金や社会保険、雇用保険などの申告や加入の義務などについてまとめてみました。
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