最低賃金というのは労働者に支払うべき都道府県別の最低限の賃金です。毎年10月1日のタイミングで改定が行われています。2025年度(令和7年度)は過去最大の上げ幅(前年比+66円)での引き上げが行われ、全国加重平均で1,121円となりました。また、すべての都道府県で1,000円の大台を超える水準となっています。

自治体によって最低賃金の金額は異なるものの、労働者として働く場合は特にこのシステムについて理解しておくべきです。特にブラックバイトと呼ばれる仕事先が存在する中で、こうした知識を身につけておくことの重要性はますます高まってきているはずです。

今回はそんな働く人ならだれもが知っておきたい最低賃金の仕組みや範囲などをわかりやすく解説していきます。

最低賃金とは何か?

最低賃金制度とは、最低賃金法という法律に基づいて国が賃金の最低限度を定めて、使用者(働かせる人)はその最低賃金以上の賃金を支払わなければならないという制度です。この最低賃金の決まりは労働者(働き手)と使用者(働かせる人)の合意よりも強力です。

たとえば、時給1,000円で働くということにアルバイトも会社も合意していたとしても、働く地域の最低賃金が1,100円なら、最低でも1,100円を使用者は支払う必要があります。

最低賃金はどう決まる?最低賃金は以下のプロセスで決定されます。

  • 中央最低賃金審議会(公益・労働者・使用者の代表で構成)が全国的な目安額を答申する。
  • 地方最低賃金審議会が、各都道府県の地域の実情を考慮して審議する。
  • 各都道府県の労働局長が正式に決定・公示する。

最低賃金はいくらなの?

最低賃金には「地域別の最低賃金(都道府県単位)」と「特定最低賃金」の二つがあります。

地域別の最低賃金(都道府県単位)

産業、職種にかかわりなくすべての労働者と使用者に適用される最低の賃金で、都道府県ごとに定められています。正社員や契約社員、パート、アルバイト、嘱託職員といった雇用形態や名称にかかわらずすべての労働者・使用者に適用されています。

なお、適用される賃金は実際に働いている事業場所で適用されます。たとえば、神奈川県の派遣会社で雇われたけど、働いている場所は東京都という場合は、東京都の最低賃金が適用されます。

2025年10月1日以降の主要な都道府県の最低賃金および全国加重平均は下記のとおりとなっています。過去最大の引き上げ幅となり、すべての都道府県で1,000円を超えています。

都道府県 2025年10月1日~の最低賃金
東京 1,226円
神奈川 1,225円
大阪 1,177円
埼玉 1,141円
千葉 1,140円
愛知 1,140円
福岡 1,057円
鹿児島 1,026円
全国加重平均額 1,121円

特定最低賃金

こちらは、特定の産業に雇用される基幹的労働者を対象として、関係労使が地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されています。対象となる産業で働く場合、パートやアルバイトであっても適用される場合があります。

最低賃金が減額される特例ケース

原則として全労働者に適用される最低賃金ですが、以下のようなケースでは都道府県労働局長の許可を得ることで減額が認められる特例制度(最低賃金法第7条)があります。

  • 精神・身体の障害により著しく労働能力が低い方
  • 断続的労働に従事する方(警備員など)
  • 技能習得中の方(試用・研修期間の一部ケースなど)

これらは「障害があるから」「研修中だから」という理由だけで自動的に減額されるわけではなく、必ず労働局長の許可が必要です。

最低賃金において労働者が気をつけておくべきこと

最低賃金は労働者に対して必ず支払うべき最低金額の賃金です。これを意図しているしていないを別として下回って働かせているケースもあるようです。そうならないためにも働く側もそれをチェックするようにしましょう。

1)そもそも最低賃金の計算方法を理解しよう

こちらについては厚生労働省のホームページにわかりやすい図がありましたので以下の通り引用いたします。

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基本的には、基本給+諸手当が対象です。皆勤手当や家族手当、通勤手当は諸手当の計算対象からは除外します。手当として含まれるのは「役職手当」のように労働の対価として受け取っている手当となります。

時給と最低賃金の計算方法

時給で働いているアルバイトやパートという場合は単純です。いわゆる時間給が基本となります。なお、店長手当や資格手当などを受け取っている場合、手当合計額÷労働時間で計算した「時間当たりの手当」を時間給にプラスしてください。これが最低賃金を下回っている場合は違法です。

月給と最低賃金の計算方法

月給の場合は少し計算がややこしくなります。なお、月給という場合は「完全月給」と「日給月給」の二種類があります。それぞれの違いについては以下の記事でも紹介していますので参考にしてみてください。

新社会人のための給与明細の見方・読み方

ただ、最低賃金との比較をするときの方法は同じです。

1か月の労働日数×1日の労働時間=月間の労働時間
月給÷月間の労働時間=1時間当たりの給料

以上のように計算します。なお、資格手当などがある場合は手当合計額÷労働時間で計算した「時間当たりの手当」を上記の1時間あたりの給料に加算して計算します。

2)研修期間や試用期間、見習い期間なども関係ない

よくあるケースとして試用期間中の賃金は正規採用よりも安いことはあります。ただし、だからといって最低賃金を下回って良いわけではありません。差をつけることは問題ありませんが、最低賃金は守る必要があります。

なお、徒弟制度、師弟関係のように職人としての技能を身につけるためなどの理由で安い賃金で働かせているというケースもあります。こちらも法的にいえば労働者であることは間違いないため、最低賃金を支払う必要があります。

一方で労働契約ではないというケースもあります。たとえば、十両未満の相撲取は部屋に所属しているものの扱いは力士養成所の学生のような扱いになっています。こうした部分で判断を難しくしているケースもあるようですが、少し特殊な事例ですね。

ただ、こうした事例はごく限定された話であり、通常のアルバイトやパートであり労働性があれば、前述の特例許可を得ていない限り、見習いだからという理由で給料を最低賃金以下にすることはできません。

3)もらっているようでも計算したら最低賃金以下だったというケース

みなし残業の規定があるような会社で時々あるケースです。いわゆる固定残業代で企業が一定の残業時間を想定して月給にあらかじめ加えておくという制度です。制度自体はルールが定められていれば問題ないのですが、ルール自体には問題がなくても最低賃金を結果的に下回るということもあります。

【計算例】
みなし残業が50時間。月22日勤務(1日8時間)で月給28万円という場合を考えてみましょう。

たとえば、東京都の最低賃金は1,226円です。残業(1日8時間超分)については1.25倍の約1,532.5円(時間外勤務手当)が必要になります。

最低賃金の対象になるのは基本給+諸手当(所定内給与)です。時間外勤務手当は差し引いて考える必要があります。50時間の見なし残業があるなら、1,532.5円×50時間=76,625円は給与から差し引く必要があります。となると、このケースの基本給相当は280,000円-76,625円=203,375円となります。

基本の労働時間は8時間×22日=176時間です。
203,375円÷176時間=約1,155円となり、東京都の最低賃金1,226円を下回っているという計算になります。

4)派遣社員は要注意。派遣元の所在地は関係ない

中小の派遣会社で多いミス(故意?)として、派遣社員に対する給料をその派遣先の最低賃金ではなく、派遣元の会社の所在地で計算しているというケースです。

たとえば、東京の最低賃金と隣県の最低賃金では差があります。派遣元が他県であっても、実際に働いている事業所(派遣先)の都道府県の最低賃金が適用されます。こうしたケースで地方の最低賃金を基に給与計算が行われており、実際に働いている都市部の最低賃金を割っていたというケースも少なくないようです。

最低賃金を下回っていたという場合はどうしたらいいの?

計算をしてみたら最低賃金を下回っていたという場合はどうしたらよいのでしょうか?いくつか方法がありますが、中には勤務先との関係が壊れてしまうようなケースもあります。

使用者(会社)も最低賃金を下回っていることを理解しているケース

これはかなり悪質です。同じような雇用状態の人がいるというのであれば、労働基準監督署に資料(給与明細やタイムカードなど)を持って行き、相談をしてみましょう。

使用者が最低賃金を知らない、誤解していたケース

これも微妙ではあると思いますが、最低賃金について計算の方法を間違っていたというような場合やそもそもの理解不足だったというようなケースもあるかもしれません。
たとえば、皆勤手当を支給しており、それを含めたらセーフ(最低賃金以上)で対象外ということを知らなかったというような場合などがあげられるでしょうか?

こうした場合は勤務先との関係が良好であれば相談してみるのも良いかもしれません。ただ、こちらのケースでも自分からは言いにくい場合は労働基準監督署に相談をするという手もあります。

最低賃金法違反の罰則について

なお、使用者が最低賃金を守らなかった場合、法律によって厳しく罰せられる規定が存在します。

  • 地域別最低賃金を下回った場合:使用者に50万円以下の罰金(最低賃金法第40条)
  • 特定最低賃金を下回った場合:賃金全額払いの原則違反として30万円以下の罰金(労働基準法第120条)

企業にとっても法違反は大きなリスクとなるため、適正な賃金が支払われるべきなのです。

時効は3年。過去の分だって請求できる

給与債権の時効は現在3年(2020年4月1日の労働基準法改正により延長)です。起算点は「賃金支払日」となり、最低賃金未満で働いていた場合には、その差額の最長3年分を請求することができます。なお、この時効は将来的に5年へ延長される方向で経過措置中となっています。

最低賃金未満の給料しか払ってくれないような会社に未練はないというのであれば、もめる前提で労働審判制度や裁判などで差額を請求することは可能です。

ちなみに、労働審判制度とは、労働者と使用者(事業主)との労働問題を迅速に解決することを目的とした裁判外手続きの一つです。未払い残業代、給料の未払い、退職金や賞与の未払い、労働条件の不利益変更、不当解雇、雇い止め、退職強要など個々の労働者と会社との間での労働問題解決に利用できる制度となっています。

私が感じている範囲ではアルバイトやパートなどで働いている人の中には最低賃金以下で働いている人もいます。また、ときどき、アルバイトの募集要項などで、最賃以下じゃん……という求人を出しているところも目にします。

つまり、それだけ最低賃金というものは守られていないようです。ということは、もしかしたらあなた自身も最低賃金未満で働かされているかもしれませんよ……。

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以上、働くなら知っておきたい最低賃金についてまとめてみました。

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ふかちゃん
マネーライフハック編集長。証券会社で個人向け金融サービスに従事した経験をもとに、2004年より金融・投資・クレジットカード・節約・ポイント活用に関する情報を発信しています。2011年からMoneyLifehackを運営し、2018年3月には月間200万PVを達成。金融サービスの提供側ではなく、利用者目線で実際に使って検証した一次情報をもとに、家計改善に役立つ情報を分かりやすくお届けしています。
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