結婚して一生涯パートナーと仲むつまじく暮らすというのは一つの理想ではありますが、様々な原因で離婚を考えている夫婦もいるかと思います。

熟年離婚と言う言葉もあるとおり、最近では同居期間が長い熟年者の離婚も増えています。

近年では年金の分割や財産分与に関する法改正など、女性にとって不利になりにくい条件が整備されてきている面もありますが、準備不足により離婚後に経済的に困窮する女性も少なくありません。今回は、2026年施行の最新の法改正を踏まえ、熟年離婚を考えたときの女性のお金の損得や注意点についてまとめていきます。

国内の熟年離婚の現状と生活設計の重要性

divorce日本国内における年間の離婚件数は、2024年のデータで185,895組となっており、依然として一定の水準が続いています(一方で再婚の件数も増えています)。とくに近年目立つのが、同居期間が20年以上の「熟年離婚」であり、全離婚件数の2割超を占めるまでに増加しています。

若いときの離婚はもちろんですが、特に熟年離婚では老後の蓄えなど「お金に関する問題」が深く絡むことが多いです。後々トラブルになることがないように、熟年離婚におけるお金の損得と注意点については正確に理解しておく必要があるでしょう。

熟年離婚後の生活を考える、生活設計をする

離婚をした場合、別々に暮らすことになります。当然ながら一人で生活できるだけのお金(収入、資産)も必要になります。

熟年離婚後も資金的な問題がないというのであれば心配は少ないですが、自立が難しい場合はしっかりとした生活設計を考え、離婚準備をしておかなければなりません。

後から説明する離婚で手に入れることができるお金というものもありますが、離婚後の就業や毎月の具体的な収支も考えておく必要があります。

毎月の具体的な生活費の必要額や収入見込み額を考える

離婚後にどのような形で生活するかは人それぞれかと思いますが、生活費の必要額と収入の見込み額を踏まえて生活設計を立てておくことが非常に重要です。

単身女性の月平均消費支出の目安(2024年総務省家計調査より)
・35〜59歳の単身女性:約180,000円
・60歳以上の単身女性:約158,800円
・65歳以上単身無職女性の毎月の不足額:約28,000円(年金のみでは赤字)

上記のデータからもわかるように、年金収入だけでは毎月赤字になるケースが多く、これを補うための資産や就労収入が必要です。熟年離婚の際は、離婚後の当面の期間だけでなく、老後を含めた生涯の生活設計までできれば完璧です。

老後において重要な収入源となる年金(年金分割)については後述します。

熟年離婚後の就業と経済的自立

熟年離婚をする場合、妻もこれまで正社員等で働いてきたというのであれば、経済的自立は容易でしょう。

一方で専業主婦あるいはパートといった働き方であった場合、高齢になってから離婚後に経済的に完全に自立するのは容易ではありません。離婚をすすめていくにあたって、財産分与や年金分割といった離婚条件の中で、適正な資産を受け取る方法を構築しておくことが不可欠となります。

熟年離婚で妻が手にするお金と失うお金

熟年離婚によって手にする可能性があるお金と失ってしまうお金をまとめます。金銭的なメリットとデメリットが生じることになります。

大切なのは、離婚をした後に経済的に困窮することがないかどうかをしっかりと把握しておくことです。

離婚によって妻が手にする可能性があるお金

  • 財産分与(夫婦の共有財産)
  • 慰謝料(相手に非がない場合はゼロ)
  • 養育費用(子供がいない、独立しているならもらえない)
  • 年金分割(夫の厚生年金のうち報酬比例部分を婚姻期間に応じて分割)

【重要】2026年4月施行の財産分与に関する法改正ルール
2026年4月1日の民法改正により、財産分与に関するルールが大きく変更され、より公平な分割がしやすくなりました。
1. 「2分の1ルール」の明文化:婚姻中の財産は原則半々とする根拠が法律に記載されました。
2. 考慮すべき事情の明確化:一方が家事や育児に専念した貢献度が正式に考慮されます。
3. 情報開示命令の新設:相手が財産を隠していると疑われる場合、裁判所が開示を命令できるようになりました。
4. 請求期限の延長:後述しますが、請求期間が従来の2年から「5年」に延長されました。

離婚によって妻が失うお金や利益、権利

  • 相続財産
  • 一部の年金(遺族年金や加給年金)
  • 死亡保険金など(民間の生命保険など)
  • (専業主婦の場合)第3号被保険者としての利益

離婚で受け取れるお金と受け取れないお金の注意点

多くの人が勘違いしやすい、離婚にまつわる財産の分割についての注意点を紹介していきます。

夫(妻)が相続した財産は共有財産ではない

財産分与によって分割される財産は、原則として婚姻期間中に築いた「共有財産」のみです。

たとえば、夫が両親からもらったお金や相続した財産と言うものは「特有財産」として分割の対象外となります。

どこぞのお話で、資産家の親が死亡して夫(妻)に多額の遺産が入ってきたので、それも分割してもらえると思って離婚しようとしたらその財産は対象外だった……なんて話もあります。

一方、離婚せずに配偶者が死亡した場合には特有財産も含めて、妻は相続権を有することになります。

退職金は貰う前は共有財産じゃない

熟年離婚のときに考えておきたいのはやはり「退職金」です。

退職金の扱いは、実際に受け取るまではもらえるかどうか確実ではありません。そのため、基本的に受け取る前の退職金は共有財産となりません。

退職まであと数ヶ月というようなケースでは確実性が高いため、それに合わせた分割も可能になるでしょう。しかし10年以上先だと分割対象としては認められないことが一般的です。

そのため、熟年離婚として多いのはこの「退職金が支給されたタイミング」なわけです。夫は引退後に妻とゆっくり過ごそうと思ったのに、妻は夫の退職のタイミングで離婚を切りだす、みたいな話です。ドラマみたいですが実際によくあります。

年金分割(報酬比例部分)と請求期限の延長

離婚等によって、婚姻期間中の厚生年金の分割が可能です。

夫がサラリーマンとして働いていた場合、第2号被保険者として「厚生年金」に加入しています。こちらの厚生年金の一部(報酬比例部分)を婚姻期間に応じて分割します。

離婚成立の時期 年金分割・財産分与の請求期限
2026年3月31日以前 離婚の翌日から2年以内
2026年4月1日以降 離婚の翌日から5年以内

2026年4月の法改正により、請求期限が2年から5年へと大幅に延長されました。これにより、離婚直後の精神的・経済的な混乱期を過ぎてからでも、落ち着いて手続きができるようになっています。

ちなみに、50歳以上で老齢年金の受給資格(10年以上の加入)を満たしていれば年金事務所で厚生年金受給額の見込み額を教えて貰えます(あるいはねんきん定期便でも50歳以上なら見込み額が記載されています)。

なお、自営業のように国民年金にしか加入していないような場合は、そもそも分割する年金はないことになってしまいます。

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逆に、DINKSのように夫婦共働きでどちらも正社員(第2号被保険者)という場合は、それぞれが持っている報酬比例部分を比較し、多い方から少ない方へ分割することになります。妻だけが一方的に受け取れるというわけではありません。

個人型確定拠出年金(iDeCo)も退職金と同様の扱い

高い節税効果で人気を集めている個人型確定拠出年金(iDeCo)は「退職金」同様の扱いになります。受給する前(通常は60歳前)であれば、不確実性が高いため夫婦の共有財産とはみなされず、財産分与の対象外となるのが一般的です。

ただし、受給が目前に迫っている場合の扱いはケースバイケースとなるでしょう。

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遺族年金や生命保険金などは受け取れない。年金の支払い義務も発生

失ってしまうお金については、夫に万が一のことがあった場合に受け取れる遺族年金や、婚姻中の生命保険の受け取りなどもできなくなります(受取人が変更されなければ受け取れますが、離婚すればほぼ変更されるでしょう)。

遺族年金制度の見直しに関する注意点
2026年以降、遺族厚生年金の支給対象や期間が見直される議論が進んでいます。とくに「子のいない配偶者への支給期間が最大5年の有期給付に変更される」といった制度縮小が予定されており、離婚せずに婚姻を継続した場合でも、将来受け取れる遺族年金の前提が変わる可能性がある点には留意が必要です。

また、サラリーマンの専業主婦(第3号被保険者)の場合は、これまで事実上免除されていた国民年金保険料や健康保険料の支払い義務が離婚後に発生することになります。社会保険料に関しては収入にもよりますが、免除や減免措置などがあります。

未成年の子どもがいる場合は「共同親権制度」にも留意

熟年離婚の場合、子どもはすでに独立しているケースが多いですが、もし未成年の子どもがいる状況で離婚を検討する場合、2026年4月からスタートした「共同親権制度」についても理解しておく必要があります。

これまで離婚後は必ず単独親権となっていましたが、父母の協議(または裁判所の判断)により、離婚後も両者が親権を持つ「共同親権」を選択できるようになりました。養育費の分担や子どもとの関わり方が変わるため、該当する方は併せて確認しておきましょう。

離婚ではなく“別居”と言う選択肢もある

すぐに離婚をするのではなく“別居”と言う選択肢も一つです。夫婦が別居して離婚も含めた検討をするという手もあるでしょう。

別居の場合でも婚姻費用(コンピ)という名目で、収入が多い側から少ない側へ生活費を請求し、受け取ることができます。

離婚に向けた別居には前向きなものもあれば後ろ向きなものもあると思います。ただ、相手が働いている段階であれば、すぐの離婚ではなく別居を経ての離婚の方(あるいは離婚せずに別居状態を続ける方)が経済的にメリットがある場合も少なくありません。

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離婚を「お金」の損得勘定で動くのは間違い?

熟年離婚後の生活が思っていた通り幸せになったという人もいれば、そうでなく逆に不幸になったと言う人もいます。正直なところ、離婚が正解か不正解かは誰にもわかりませんし、結果論に過ぎません。

しかしながら、特に女性の場合には経済的な自立が出来ていないケースが多く、そのような状況で勢いで離婚すると経済的に困窮するケースが多いです。そうなってしまうと、多くの場合は熟年離婚が自分にとってマイナスになってしまいます。

そうしたことも踏まえて、お金のこと(損得勘定)を客観的に考えて離婚を検討するというのはもっともなことだと思います。

逆に夫からすれば前述の通り、財産の分割として「退職金」という部分が大きいことから、退職をしたら妻から離婚を切り出された……と青天の霹靂のように感じる人も多いかもしれません。そういうタイミングが一番危ないということも理解しておくべきでしょう。

以上、熟年離婚で考える女性の損得勘定とメリット、デメリット、そして最新の法改正による影響についてまとめてみました。

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ふかちゃん
マネーライフハック編集長。証券会社で個人向け金融サービスに従事した経験をもとに、2004年より金融・投資・クレジットカード・節約・ポイント活用に関する情報を発信しています。2011年からMoneyLifehackを運営し、2018年3月には月間200万PVを達成。金融サービスの提供側ではなく、利用者目線で実際に使って検証した一次情報をもとに、家計改善に役立つ情報を分かりやすくお届けしています。
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