退職金とは?相場、計算方法、税金、手取りの考え方をわかりやすく解説
退職金は、会社を退職するときに受け取る一時金や年金形式の給付です。
ただし、法律で全員に支給が義務づけられているものではありません。
退職金制度の有無、金額の計算方法、自己都合退職と定年退職の扱いは、会社の退職金規程や企業年金制度で決まります。
退職金は税制上優遇されていますが、受け取り方や勤続年数によって手取りは変わります。
この記事では、退職金の種類、相場、計算方法、退職所得控除、手取りの見方を整理します。
この記事の要点
- 退職金は会社ごとの制度です。制度がない会社では、原則として退職金は支給されません。
- 厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、定年退職者の平均退職給付額は大学・大学院卒の管理、事務、技術職で1,896万円です。
- 退職所得は、原則として「退職金から退職所得控除を引き、その2分の1」を課税対象にします。
- 勤続5年以下の役員退職金や短期退職手当等では、2分の1課税が制限される場合があります。
- 退職前には、退職金規程、企業年金、iDeCo、退職日と社会保険料をまとめて確認します。
退職金とは
退職金とは、退職を理由として勤務先から支払われるお金です。
退職一時金としてまとめて受け取る場合もあれば、企業年金として分割して受け取る場合もあります。
企業型確定拠出年金やiDeCoの老齢一時金も、税法上は退職所得として扱われることがあります。
退職金は、賃金や残業代のようにすべての会社が必ず払うものではありません。
就業規則や退職金規程に退職金制度があれば、その規程に基づいて支給されます。
制度がない会社では、長く働いても退職金が出ないことがあります。
退職金の主な種類
退職金制度は、会社によって形が違います。
代表的なものは次の四つです。
| 種類 | 内容 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 退職一時金 | 退職時に会社から一括で支払われる | 自己都合、会社都合、定年で支給率が変わるか |
| 確定給付企業年金 | 会社が給付額を設計し、年金または一時金で支払う | 一時金選択時の税金、年金受取時の雑所得 |
| 企業型確定拠出年金 | 掛金を従業員ごとの口座で運用し、運用結果で受取額が変わる | 運用残高、受取開始年齢、iDeCoとの関係 |
| 中小企業退職金共済 | 中小企業が外部制度を使って退職金を準備する | 加入期間、掛金月額、退職理由ごとの支給額 |
企業年金の種類は、次の記事でも整理しています。
退職金の相場
退職金の相場を見るときは、学歴、職種、勤続年数、退職理由、制度の形を分けます。
厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、退職給付制度がある企業で勤続20年以上かつ45歳以上の退職者を対象に、退職給付額を集計しています。
| 区分 | 定年退職の平均退職給付額 | 自己都合退職の平均退職給付額 |
|---|---|---|
| 大学・大学院卒(管理、事務、技術職) | 1,896万円 | 1,441万円 |
| 高校卒(管理、事務、技術職) | 1,682万円 | 1,280万円 |
| 高校卒(現業職) | 1,183万円 | 921万円 |
同じ定年退職でも、退職一時金制度のみ、退職年金制度のみ、両制度併用で金額が変わります。
大学・大学院卒の管理、事務、技術職では、退職一時金制度のみが1,623万円、退職年金制度のみが1,801万円、両制度併用が2,261万円です。
平均額は目安になりますが、自分の退職金を知るには会社の退職金規程と企業年金の加入状況を確認する必要があります。
退職金の計算方法
退職金の計算方法は会社ごとに違います。
よく使われる考え方は、基本給、勤続年数、退職理由別の支給率を組み合わせる方法です。
退職金の例:退職時基本給 × 勤続年数別係数 × 退職理由別支給率
自己都合退職では、定年退職や会社都合退職より支給率が低く設定されることがあります。
ポイント制退職金では、勤続年数、役職、評価などで毎年ポイントを積み上げ、退職時にポイント単価を掛けて計算します。
企業型確定拠出年金では、会社が拠出した掛金と運用結果によって受取額が変わります。
退職金にかかる税金
退職金を一時金で受け取る場合、税法上は退職所得として扱われます。
退職所得は、長年働いた結果としてまとめて受け取る性質があるため、給与所得より税負担が軽くなりやすい仕組みです。
原則の計算式は次のとおりです。
退職所得の金額=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2
退職所得控除額は、勤続年数で決まります。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円×勤続年数。80万円未満の場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
勤続年数に1年未満の端数がある場合、その端数は1年に切り上げます。
たとえば勤続30年、退職金2,000万円なら、退職所得控除額は1,500万円です。
課税対象になる退職所得は、2,000万円から1,500万円を引いた500万円の2分の1、つまり250万円です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 退職金 | 20,000,000円 |
| 退職所得控除額 | 15,000,000円 |
| 課税退職所得金額 | 2,500,000円 |
| 所得税と復興特別所得税の概算 | 155,702円 |
| 住民税の概算 | 250,000円 |
| 税額合計の概算 | 405,702円 |
| 手取りの概算 | 19,594,298円 |
この例では、2,000万円の退職金でも税額合計は約40.5万円です。
退職所得控除と2分の1課税があるため、給与として2,000万円を受け取る場合とは税負担が大きく違います。
勤続5年以下の退職金は例外がある
退職所得の2分の1課税には例外があります。
役員等としての勤続年数が5年以下の特定役員退職手当等は、2分の1計算を使えません。
役員以外でも、勤続年数5年以下の短期退職手当等では、退職金から退職所得控除額を引いた金額のうち300万円を超える部分について2分の1計算を使えません。
短期離職時の高額退職金や、役員退職金を受け取る場合は、通常の退職金より税負担が重くなりやすいです。
退職所得の受給に関する申告書を出す
退職金を受け取るときは、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出します。
提出していれば、会社が退職所得控除を反映して源泉徴収し、原則として確定申告は不要です。
提出していない場合、退職金の支払額に対して20.42%が源泉徴収されます。
この場合は確定申告で精算します。
医療費控除や寄附金控除を受けるために確定申告する場合は、退職所得も申告書に記載します。
一時金と年金受け取りの違い
企業年金や確定拠出年金では、一時金、年金、併用から選べることがあります。
一時金で受け取ると退職所得になり、退職所得控除を使えます。
年金で受け取ると雑所得になり、公的年金等控除の対象になります。
どちらが得かは、退職所得控除の残り、ほかの年金収入、住民税、国民健康保険料、介護保険料で変わります。
退職金が退職所得控除の範囲に収まるなら、一時金受け取りの税負担は軽くなりやすいです。
一方で、老後資金を使いすぎる不安がある人は、年金受け取りで毎年の収入に分ける選択にも意味があります。
50代からのiDeCoと退職金の関係は、次の記事でも解説しています。
退職前に確認したいこと
退職金の見込み額を知りたい場合は、退職前に次の項目を確認します。
- 会社に退職金制度があるか
- 退職金規程で自己都合、会社都合、定年の支給率がどう違うか
- 企業年金や企業型確定拠出年金に加入しているか
- 退職金の受け取り時期
- 退職所得の受給に関する申告書を提出する手続き
- 退職日によって社会保険料や年金の扱いが変わるか
退職日は、社会保険料や年金の加入月にも影響します。
月末退職と月末1日前退職の違いは、次の記事で整理しています。
結論として退職金で見るべきポイント
退職金は、相場だけで判断できません。
会社の制度、勤続年数、退職理由、企業年金の有無、受け取り方で金額と手取りが変わります。
まず退職金規程で自分の計算式を確認し、退職所得控除を使った手取りを概算します。
企業年金やiDeCoがある人は、一時金と年金の受け取り方を分けて考えると、税金と老後資金の見通しを立てやすくなります。
次に読む記事
企業年金の種類を整理したい人は、次の記事を確認してください。
退職日と社会保険料の関係は、退職前に見落としやすいポイントです。
退職金とiDeCoの受け取りを一緒に考えるなら、50代からのiDeCo戦略も参考になります。
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