税の申告漏れなどの防止を目的に2013年より国外に5000万円を超える財産がある人は「国外財産調書」というものの申告が義務付けられています。
未提出や虚偽の申告に関しては罰則も設けられているため、海外資産を一定以上持つ方は注意が必要です。
今回は海外資産の申告義務と国外財産調書制度の内容、それと一般の個人投資家に対する影響についてまとめます。
国外財産調書提出の対象となる人は?
各年末(12月末)時点で海外に5000万円以上の国外財産を持つ個人(日本の居住者)が対象です。
個人が対象なので、法人で所有する場合は、その年の年度末時点(3月末)時点で非永住者は対象外です。
制度は2013年に始まっていますが、提出件数は2016年で9,102件の財産総額は3兆3015億円です。
国外財産の定義と評価
国外財産とは、たとえば、不動産(土地建物)、貴金属、海外の銀行口座にある預金、海外の証券口座にある株式や債券等の有価証券、海外で契約した保険、海外の金融機関等に信託している信託財産などを指します。
評価は「時価」で行います。
取得価格ではない点に注意して下さい。たとえば4000万円で買った海外の不動産が値上がりして年末時点で時価評価で5000万円を超えていれば調書提出の義務が生じます。
国外財産調書の未提出や虚偽申告には罰則もある
国外財産調書に虚偽の記載をして提出した場合や、正当な理由なく期限内に提出をしなかった場合、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処せられます。
また、調書を提出せず、確定申告で国外財産に関する収入を申告していない場合には、過少申告加算税も課されます。
国外財産調書で海外資産による脱税がしにくくなる
国外財産調書を提出させる目的は海外資産の把握とそれによる収入の捕捉をより強化することと言われています。
たとえば、海外に株式投資の有価証券を保有している記録があるのに、それから得られているはずの配当金などの収入が申告されていない場合のように整合性をチェックすることができるようになります。このような形での申告漏れなどを調査することができるようになります。
一般の投資家にはどう影響する?
国外財産を5000万円以上保有している人が対象となるわけです。
代表的なところでは有価証券(株や債券、投資信託)などが挙げられます。たとえば、外国企業の株式や海外籍のファンド(ETFや外貨MMFなど)がどうなるかが気になりますよね?
簡単にまとめます。
国内金融機関で管理されている有価証券は国内・国外を問わず制度の対象外となります。たとえば、楽天証券で管理している海外ETFは外国籍ですが、国外財産には当たりません。
一方の海外金融機関で管理されている有価証券は国内外を問わず制度の対象となります。海外のプライベートバンク(金融機関)で買ったトヨタの株式は国外財産に当たるわけですね。
こうした有価証券については12月31日の最終価格(時価)で評価を行います。
その他の財産についてもまとめますが、基本的には税理士などの専門家を入れることをお勧めします。結構面倒です。
- 不動産:公的機関による表示価格
- 美術品・その他動産:専門家による見積もり価格あるいは時価
- 償却資産:専門家による計算・査定
国外財産調書制度における最大に面倒なポイントは時価査定を行わなければならずその費用は当然に納税者持ちという点です。
調書制度の対象になりそうな方はなるべく早めの手続きや専門家に助力を仰ぐようにすることをお勧めします。
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