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法人の節税目的での生命保険とその節税効果、節税保険のメリット、デメリット

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会社の節税と生命保険というのは切っても切り離せない関係にあります。特に儲かっている会社などには保険会社から節税のために生命保険に入りませんか?という勧誘がひっきりなしに来るかと思います。

今回はそうした節税目的での生命保険加入と効果、注意点やリスクなどについて説明していきたいと思います。

なお、節税保険については課税当局との間でのイタチごっこ的な側面も強くあります。利用の際は最新の情報をご確認ください。

生命保険を使った節税対策とは

基本的な仕組みは、会社が契約者・保険金受取人となり、自社の役員(経営者)や従業員などに生命保険を掛けるというものです。

当然保険料が発生するわけですが、その保険料の全部または一部は損金(税法上の経費)に参入することができるというものです。

もちろん、生命保険ですので役員や従業員に万が一のことがあれば会社は保険金を受け取ることができます。この保険金を死亡退職金に充てたり、運転資金などとすることができます。

特に、会社で重要な位置を占めている役員(経営者)の死亡などは会社運営に大きな損害を与える可能性が高いので、それが保険金によってカバーできるというのはリスクヘッジにつながります。

また、こうした保険の多くは「解約返戻金」が高額に設定されているため、必要な時にはその保険を解約することで、解約返戻金を受け取ることができます。

 

実体は「節税」ではなく「課税繰り延べ」

まず、理解しておくべきことは会社が節税目的で加入する生命保険は、あくまでも「課税の繰り延べ」であるということです。

先ほどの例で、保険料は「損金」に計上できると書きましたが、解約時に受け取ることができる解約返戻金は「益金」にあたります。

たとえば、100万円の保険料を毎年しはらう節税保険に加入したとします。5年加入すれば払った保険料の総額は500万円になります。そして、5年後に解約をしたら490万円が解約返戻金としてもどってくるとしましょう。

法人税率を簡略化のために30%と仮定します。

<節税効果(繰延効果)>
100万円×0.3=30万円
30万円×5年分=150万円の節税効果

<解約時の課税>
490万円×0.3=147万円の課税

となりますね。結局節税できたとしても、戻ってきたときに課税されるわけなので、それだけを見ればあまり意味がないということになりますね。

 

課税繰り延べでも解約時が赤字なら節税効果

こうした節税保険(生命保険)はずっと黒字の会社の場合はあまり効果がありませんが、赤字が出るケースでは効果的です。

前述のケースで解約時に仮に会社が500万円の赤字決算だった場合はどうでしょう?この場合は解約返戻金の490万円は特別利益として益金になりますが、500万円の赤字と通算されるため、赤字10万円で課税されません。

そうなれば、この節税保険に加入した意味が出てきます。

保険料総額 ▲500万円
節税効果 100万円×30%×5年=150万円
解約返戻金 490万円
総経済効果 140万円

解約する年が赤字決算であれば、上記のようにプラスの結果を生むわけです。ちなみに、この経済効果というのは、保険に入った場合、入らなかった場合での損益です。

保険に加入、非加入の場合の資金繰りを書いたものが以下の表です。5年間保険に入った場合、入らなかった場合の保険料分に対する保険料と税金のお金の流れを示したものです。

保険に加入 保険に入らない
1年目 ▲100万円 ▲100万円 ▲30万円
2年目 ▲100万円 ▲100万円 ▲30万円
3年目 ▲100万円 ▲100万円 ▲30万円
4年目 ▲100万円 ▲100万円 ▲30万円
5年目 ▲100万円 ▲100万円 ▲30万円
解約年 黒字決算:343万円 赤字決算:490万円 なし
合計額 ▲157万円 ▲10万円 ▲150万円

黒字決算なら意味がない(どころかマイナス)ですが、赤字決算でうまく解約返戻金を消化できればかなりの節税効果が生まれていることがわかります。

※今回紹介している節税保険は概念上のものです。実際にはこんなに優秀な保険はありません。

 

ずっと黒字の会社にとって節税保険は意味がない

前述の表を見ていただくとわかるように、将来にわたって損失(赤字)が発生しないような会社の場合、課税の繰り延べを行っても節税効果は期待できないということになります(むしろ損)。そのためしっかりと「出口(解約する時期と損失)」を一緒に考えておく必要があるわけです。

税効果でプラス」という表現が使われるケースがありますが、これは法人税などの税金を節約できた分を含めてプラスという意味になります。受け取る解約返戻金が支払った保険料を上回るという意味ではない点にご注意ください。

 

意図的に損金を作れる代表例は役員の慰労退職金

こうした節税の出口として考えられるのが、役員の退職金です。特に功績のある役員の退職金となれば高額の退職金を支払うケースもあるでしょう。

こうした時には、会社は数千万円以上の損金が発生します。このタイミングで保険を解約することで出口を用意することはできそうです。

 

節税保険に入る前に知っておくべき注意点

このタイプの節税には結構リスクがあります。全部を詳細に説明すると大変な分量になりますので、重要度が高いものをピックアップしていきます。

 

税効果を含めてもトータルでプラスになるのは数年は必要

生命保険を使った節税がトータルでプラス(税効果含めてプラス)になるには、3年~5年程度かかるのが一般的です。税効果を含めなければ生保会社の手数料もあるため、プラスにはならないような商品もあります。

 

高額な保険料を何年も支払う必要がある、資金繰りに注意

これが一番のリスクです。生命保険を使った節税は保険料として年間100万円以上の単位で保険料を支払うことになります。 これは「途中で変更できない」のが一般的です。そのため、経営が苦しくなっても、保険料を支払う必要が出てくるわけです。

今年は儲かっていても、来年以降に渡ってもこの状態が続くかわからないという不確実性に対応する必要があるわけです。

 

退職時期が決まっていないと設計が難しい

節税保険は一般的に、特定の時期に解約返戻金が大きくなるように作られています。一般には山形の返戻率となっています。立ち上がりの時期は解約返戻率が低く、徐々に高くなりその後はまた下がっていくという形です。

そのため、退職金目的で節税保険を組むのであれば退職時期をある程度確定しておく必要がるということになります。

 

半額損金タイプは資産の固定化を招く

解約返戻率が高いタイプの保険は、保険料のうち半分しか損金に入れられないというものもあります。こういうタイプの保険は前払い保険料が貸借対照表(バランスシート)上に乗っかり、資産を固定化してしまいます。

 

将来的な税制改正のリスクが高い

こういった節税対策は将来的な税法の改正等によって影響を受けることがあります。

生命保険会社はあの手、この手を使い、節税対策ができる保険を作っていますが、当局側も黙っているわけではなく、ダメだしをしているわけです。

特に全額損金とできる全損タイプの保険は、保険設定→国税がダメ出し→別の保険設定→ダメ出しといった具合で、イタチごっこのようになっています。

今は大丈夫な保険でも、いつダメになるかはわからないというわけです。ただ、これまでは既存の契約まで訴求されて否認という事はないのですが、今後それを保証はできないでしょう。

 

ちなみに、以前紹介した「倒産防止共済」という保険も実はこの仕組みと似た方法になります。ただし、倒産防止共済のケースでは、保険料の途中変更が可能である点や数年の加入で返戻率が100%になるなど有利な点が大きく、役員に対する保障は不要であるというのであればそちらをお勧めしています。

最後に、税金に関しては税務署や税理士にご相談ください