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年金加入期間が25年から10年へと短縮され得する人、損する人

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shrink65歳から老齢基礎年金(いわゆる年金)を受け取るには原則として25年間(300か月)の年金の納付が必要でした。この年金を受け取るために年金保険料を納めなければならない期間のことを受給資格期間と呼んでいます。25年間(300か月)という基準を納付していないなどの理由で満たしていない場合、年金の給付を受けることができません。いわゆる無年金者となります。

そうした年金の受給資格期間が平成29年(2017年)8月1日より25年間(300か月)から10年間(120か月)に変更されました。

今回はそうした年金の受給資格期間が変更される理由やその背景、制度変更によって得をする人や損をする人について紹介していきます。

加入期間短縮は平成29年8月1日から

年金加入期間に短縮は民主党(現:民進党)の野田政権時に決まりましたが、付帯事項として消費税が10%に引き上げられることを条件としていました。これは財源の問題があるからですね。

しかしながら、自民党の第2次安倍政権は平成27年10月の消費税の10%増税を平成29年4月に見送り、それに合わせて本件も延期されました。さらに、平成29年4月の増税も平成31年10月に再延期しました。

ところが、安倍総理は年金の受給資格期間の短縮は平成29年からスタートできるように準備を進め、実際に平成29年8月1日からは、資格期間が10年間以上あれば老齢年金を受け取ることができるようになりました。

 

年金加入期間が短縮される背景

日本の場合、25年(300カ月)という受給資格期間がないと年金を受給できません。

こうした受給資格期間は米国の10年相当、ドイツの5年と比較すると長いです。イギリス、フランスなどはそもそもそうした制限がありません。こうした状況と比較すると長すぎる!という指摘もわかります。

ただし、諸外国は一定の所得がない人は年金の納付義務もありません。日本の場合25年とはいえ、所得がない人の免除、猶予、カラ期間(後述)なども期間に合算するため、意図的に納付しないという人を除いて25年を達成するというのは難しくありません。

一方で、社会保険庁が平成19年に実施した無年金者(年金の受給資格がない人)は見込み者も含めれば118万人もいるという統計が取られました。25年という受給資格期間だと24年間年金を払っていたとしても、1年足りないだけで年金がもらえないわけです。

実際、年金を払っていない人の中には「どうせも資格を満たせないから払わない」という人も少なくないはずで、受給資格期間の短縮は40%近いともいわれる国民年金の未納率の改善にもつながるのではないかと期待されています。

こうした背景から、年金加入期間を25年(300か月)から10年(120か月)に短縮するという決定がされたわけです。

 

年金加入期間に含まれるもの

そもそも年金受給資格期間に含まれる期間というのはどういう期間なのでしょうか。

  1. 国民年金の納付をした期間
  2. 厚生年金の納付をした期間
  3. 第三号被保険者(サラリーマンの妻)としての期間
  4. 国民年金の保険料納付を免除された期間
  5. 合算対象期間(カラ期間)

 

国民年金・厚生年金の納付期間

自営業や会社勤め、公務員などの形で実際に年金保険料を支払っている期間です。あまり説明する必要もないかと思います。国民年金と厚生年金については「意外と知らない国民年金と厚生年金の違い」でそれぞれの違いも紹介しています。

 

第三号被保険者(サラリーマンの妻)としての期間

第2号被保険者(厚生年金加入者)の配偶者で、収入が一定以下であるなどの条件を満たした人は第3号被保険者となります。この期間中は保険料は配偶者の厚生年金保険から拠出されているので直接の保険料負担はありませんが、保険料納付期間には当然含まれます。

なお、この第3号被保険者問題については「年金の第3号被保険者制度の問題点とその廃止議論についてのまとめ」などでも紹介したように廃止についての議論も常に行われており、今後制度が変更される可能性もあるでしょう。

 

国民年金の保険料納付を免除された期間

国民年金は所得が少ない、大学生であるなどの理由で納付が免除や猶予されることがあります。実際には法定免除(障害年金受給者など)、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除、納付猶予、学生納付特例などがあります。

免除や猶予については一定以下の所得であるなどの要件はありますが、条件に当てはまるのであればしっかりと申請しておきましょう。

申請しないと条件を満たしていても免除や猶予となりません。

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なお、免除や猶予の申請をしておけば、あとから払える状況になった時に「追納」といって差額を支払うことで年金額を増やすことも可能です。

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合算対象期間(カラ期間)

老齢基礎年金等の受給資格期間において期間には含めるけど、年金額には反映しない期間のことです。

①昭和61年3月以前の国民年金が任意加入であった期間
②平成3年3月以前の学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間
③海外に住んでいた期間

こうした期間が挙げられます。保険料を払っていないわけだから、将来の年金額は減るけれども年金受給資格期間には含まれるというわけです。

 

年金受給資格期間が25年から10年に短縮して得する人、損する人

さて、それでは年金受給期間が短縮されることで実際にはどんな人が得や損をするのでしょうか?基本的には加入期間が短縮される平成29年4月(2017年4月)以降は、これまで無年金者として扱われてきた受給期間が不足していた人に対して年金が支給されるようにあるわけです。

なお、当然ですが、年金支給額は期間によって変わります。10年間の年金支払い(満額)があったとしての給付額は月額換算で16500円程度、20年間で32800円程度と想定されています。

 

何らかの理由で年金保険料を払ってこなかった人

いわゆる無年金者の方で、25年という受給資格期間が足りないということで年金を受給できなかった人はこれによって受給が可能になります。

また、現役で働いている方でも、いまさら年金を払っても期間が不足してどうせもらえないから払わないという人も、保険料を納付すれば年金受給資格が得られるようになります。

 

日本で10年以上働いていた、働く外国人

日本の年金制度に国籍は関係ありません。

そのため、日本に住んで働いている外国人も年金の義務が生じます。短期労働者のための脱退一時金制度や社会保障協定などもありますが、ある程度長く働く外国人労働者にとっては不利でした。制度改正によって10年以上日本で働けば日本の年金が老後に受給できるようになります。

 

生活保護を受けている無年金者は損をするかも

無年金者の方で働けない人などの中には年金とは別のセーフティーネットである生活保護を受けている方もいらっしゃるでしょう。こうした方は年金の受給資格が新たに得られ無年金者でなくなることによって収入が生まれることになります。

だからといって、金額が大きくない限りは生活保護が打ち切られるということはありません。ただし、年金収入が得られる分だけ生活保護の支給金額が少なくはなります。年金は隔月給付(2か月に1度)ということを考えると、お金のやりくりを少し考える必要がありそうです。

期間が短縮されることで10年、20年程度の年金加入者も年金を受け取ることができるようになります。一方で金額的ンはそれで生活できるようなレベルではありません。こうした政策だけで問題が解決するわけではありません。

国は私たちの老後について、自分での備えをするようにと勧めています。個人型確定拠出年金(iDeCo)のような制度も税制優遇や制度拡充とを組み合わせることでそうした形で公的年金に頼らない老後資金の準備を要求しているようにみえますね。

参考:個人型確定拠出年金のメリット・デメリット
参考:2017年からの個人型確定拠出年金の変更点のまとめ

 

以上、年金加入期間が25年から10年へと短縮されるということについてまとめてみました。